歴史に見るすっぽん

小説やドラマ、漫画、映画など様々なジャンルで取り上げられた歴史上の物語として「項羽と劉邦(こううとりゅうほう)」という題材があります。「四面楚歌」は周囲がすべて敵や反対者で、まったく孤立して、助けや味方がいない孤立無援な様を表すことわざとして知られています。これは、項羽と劉邦の中で出てくる実話が元になっています。

項羽と劉邦は、項羽の楚軍と劉邦の漢軍の戦いの話です。長く続く因縁の戦いは、紀元前202年垓下の戦い(がいかのたたかい)において、楚群の項羽が死んだことにより決着がつきます。この戦いのさなか、優勢であった漢軍が楚群を包囲し、楚軍の指揮を落とすために、楚の歌を大合唱した事が四面楚歌の元となった逸話なのです。

この垓下の戦いの直前に、虞美人が項羽の為にスッポンと烏骨鶏のスープを作ったとされています。この料理は現在でも薬膳メニューの一つ「覇王別姫鍋 (はおうべっきなべ)」として知られています。

また、これよりもさらに前、紀元前1000年頃の中国の王朝(周)では、「鼈人」といわれるすっぽんを司る役職があったといわれており、すっぽんが歴史ある食材で、重宝されている事が分かります。日本においてもすっぽんは長らく食されており、江戸時代には庶民の料理として沢山の人に親しまれていました。少しずつ数が減少したこともあり、養殖が盛んになるまで、高級食材としての扱いを受けるようになったとのことです。宮中晩さん会にすっぽんのスープがふるまわれる事もあり、上品な食材としての地位はいまだに建材といえるでしょう。

すっぽん料理―まる鍋とは!?

すっぽんには沢山の調理方法がありますが、一番有名なのはすっぽん鍋ではないでしょうか。

スッポン料理

スッポン料理

すっぽん鍋は通称まる鍋といわれており、すっぽんと野菜だけを利用したシンプルなお鍋です。京都を中心とした関西方面の伝統的な鍋で、家庭でも作られることがあります。なぜ「まる鍋」というかというと「月とすっぽん」という諺が由来であるといわれています。月とすっぽんは比較にならないもののたとえとしてよく使われます。月も、すっぽん(の甲羅)も丸いものではあるが、月が美しいのに比べ、すっぽんは泥の中にいて顔も醜いという事が語源となっています。この甲羅が「丸い」というのがすっぽんを「まる」と呼ぶ由来なのです。

材料がシンプルなため、家庭でも食べられるまる鍋ですが、専門店で食べるまる鍋はおいしさが全く違います。専門店ではコークスという燃料を使い、強力な炎で一気に過熱する方法をとっています。コークスは大量の一酸化炭素が出る為に、家庭での料理に使われることは少なくなりましたが、中華料理やまる鍋など、高火力が必要な料理には今でも使用されています。

まる鍋は土鍋で作られますが、2000度にも達するコークスの温度に耐える事のできる土鍋はありません。そこで、特殊につくられた底の分厚い土鍋が使われるのですが、それでもコークスの高温に耐えうるのは100に1つだといわれています。

専門店でまる鍋を提供する際に使われる土鍋は、沢山の土鍋から選ばれた「土鍋の中のエリート」といえるかもしれません。また、長く使っている土鍋の為、すっぽんのエキスが染みついており、コクが深まるとも言われています。

すっぽんはカメじゃない!?すっぽんの知られざる生態とは?

すっぽんはいわゆる私たちの多くが想像する「カメ」と大きな違いがあります。一番大きな違いは甲羅です。
すっぽんの甲羅はカメとは違い、平たく柔らかいのが特徴です。特に甲羅の淵はコラーゲンのかたまりでぷよぷよしているほどです。
この甲羅の特徴が生態にも大きくかかわってきます。

絶滅危惧種 シャンハイハナスッポン

シャンハイハナスッポン

一般のカメは敵が来ると防御姿勢として首や足を甲羅の中に引っ込めます。角質化された甲羅は非常に硬く、この状態になると外敵は手も足も出ません。恐竜が全滅したにもかかわらず、カメが生き残ったのはこの甲羅のおかげであるといわれています。しかし、すっぽんには硬い甲羅がありません。その為、性格は非常に警戒心が強く、臆病です。普段は平たい体の特徴を生かして、岩の隙間などにいる事が多いです。また、カメと違い甲羅が軽い為、陸上などでも素早く移動できます。

すっぽんは甲羅による防御ができない代わりに、強靭な顎があり、かみつくことで外敵から身を守っています。「雷が鳴るまで離さない」とよく言われますが、すっぽんが一度かみつくとちょっとやそっとでは離しません。実際は雷が鳴っても離さないといわれています。

これらの逸話が元となり、すっぽんは凶暴だという認識を持つ人もいますが、硬い甲羅を持たないすっぽんにとってはかみつく事が唯一の身を守る手段なのです。万が一すっぽんに噛まれてしまったら、無理に引っ張ってはいけません。無理にひっぱれば引っ張るほど首を甲羅に入れようともがき、ますます顎に力がはいって離してくれませんので、水にそっとつけてください。そうするとすぐに離すようです。

すっぽんの栄養価と美容について

栄養価の高い事で知られるすっぽんですが、すっぽんにはどのような栄養が含まれており、それは体にとってどのような効果があるのでしょうか?

すっぽんは一部の内臓以外はほぼすべて利用されており、例えば甲羅などもその栄養価の高さからサプリメントに利用されています。

すっぽんの一番の特徴は、良質なタンパク質です。タンパク質が分解されてできるのがアミノ酸です。アミノ酸は別名「生命の泉」といわれています。生命の誕生には原始海洋起源説、地球外起源説など、様々な仮説がありますが、生命の源がアミノ酸というところは一致していて、生命そのものを作り出す重要な物質だと認識されています。

アミノ酸は現在500種類以上発見されていますが、人間を構成するアミノ酸はわずか20種類。そして、その20種類のうちすっぽんのタンパク質には18種類が含まれており、非常にバランスがよいタンパク質であるといえます。肌の張りを保つコラーゲンもタンパク質であり、皮膚の健康を保つのにも必要不可欠です。

次に特徴とされるのは豊富に含まれるビタミンです。例えばビタミンB1を沢山含む食品で代表的なのは豚肉ですが、ほぼそれに匹敵する位の含有量があります。その他のビタミンについてもバランスよく含まれており、肌や粘膜の健康を保つビタミンB2も豊富です。すっぽんがサプリメントとして多く利用されているのは、単純に栄養価が高いというだけでなく、バランスよく美容に必要な栄養価が豊富に含まれている為だといえるでしょう。

漢方やサプリメントとしてのすっぽん

すっぽんは昔から滋養強壮の代名詞として重宝されています。

その歴史は古く、中国では紀元前前よりすっぽんに対して高い評価をしており、食医によって管理されていました。食医とは食べ物を使って治療、または病気の予防をする医者の事であり、疾医(薬を使って治療する医者)、傷医(メスを使って治療する医者)などの医者に比べて一番格式の高い位置付けの医者とされていました。今でいうところの内科医や外科医よりも、食事によって体調をコントロールする医師の身分が上とされていたのです。すっぽんは非常に体調を整える効果に優れている為、この食医により使用されていたといいます。

また、当時はすっぽんが養殖されていなかった為、とても貴重な食材とされていました。庶民の乱獲を防ぐため、卵を産むメスを食すことが禁止されるなど、厳しく管理されていたのです。

現在では養殖により比較的安価に手に入りやすくなったすっぽんは、サプリメントなどを通して手に入れやすくなりました。

すっぽんは部位によって効能が違っており、ほとんどすべての部位がサプリメントや漢方薬で利用されています。例えば、「滋養強壮」=すっぽんの脂肪、「解熱、肝臓病、ひきつけなど」=甲羅、「脱肛、陰部のできもの」=頭など挙げればきりがありません。
昨今では、精力剤やペニス増大サプリなどにも使われているなど、その効能の力強さには定評があります。

食医が病気の治療だけでなく、病気の予防にも携わっていたことからも分かるように、現代でも予防医学の観点からもすっぽんの効用は高い評価を受けており、沢山の方が利用しているのです。